フリーランスエンジニアにも適用される下請法とは? トラブル解決に役立つ事例もご紹介。

フリーランスエンジニアにも適用される下請法とは? トラブル解決に役立つ事例もご紹介。

 フリーランスエンジニアとして活動しているとクライアントからの無茶な要求に遭遇することも少ないありません。「これを断ったら今後の発注に影響が出るのではないか」と思って渋々対応してきた経験がある方もいらっしゃることでしょう。今回は、そんな無茶な要求から自身を守るための武器となる「下請法」について解説していきたいと思います。

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下請法とは、どんな法律?

下請法とは、どんな法律?

 下請法は正式には「下請代金支払遅延等防止法」という法律で、発注する側と受託する側の間でフェアな取引を実現するために定められた、独占禁止法の補完法にあたるものです。発注する側であるクライアントと受託する側のフリーランスエンジニアでは発注する側の立場が強くなりがちなため、発注側は受託側に今後の取引継続の可否をちらつかせて不利な条件を押し付けることが可能になります。下請法では、このような発注する側の行動に制限を設けることで、受託する側を保護してフェアな取引を実現することを目的としています。

下請法の対象となる企業

発注する側の企業が下請法の対象となるか否かは、発注される仕事の内容と資本金の金額によって決まります。下請法の適用対象となる企業の条件は、発注される仕事の内容によって異なりますので、今回はフリーランスエンジニアの方が対象になる「情報成果物作成・役務提供」の場合について見ていきます。

  1. 資本金5,000万円以上の企業が、基本金5,000万円以下の企業(もしくは個人事業主)に情報成果物作成・役務提供を委託する場合
  2. 資本金1,000万円以上5,000万円以下の企業が、基本金1,000万円以下の企業(もしくは個人事業主)に情報成果物作成・役務提供を委託を依頼する場合

小会社と取引する場合でも下請法の対象となることも

下請法の規制をかいぐぐるため、資本金額の大きい発注元の会社は資本金額の小さい小会社を設立して、そこからフリーランスエンジニアに仕事を発注することを考えるかもしれません。これを防止するために下請法には「トンネル会社規制」が定められています。

  1. 親会社が子会社の役員の役員の任命や免職、業務の執行などを実質的に支配している
  2. 親会社が子会社に発注した委託業務の50%以上を、フリーランスエンジニアに再委託している

上記の2条件を両方満たす時、子会社の資本金が下請法の対象外となる規模でも下請法の適用を受けることになります。

クライアントと取引するときに注意したい4つのポイント

クライアントと取引するときに注意したい4つのポイント

下請法では、発注する側に下記の4点を義務として定めています。
フリーランスエンジニアのあなたが下請法の対象となる会社と取引をする際は、これら4点が守られているかチェックするようにしてください。

書面の交付義務

口頭による発注で「言った・言わない」のトラブル防止を目的して、発注する側は発注内容を明確に記載した書面をフリーランスエンジニアに交付することが義務付けられています。

書面に記載することが義務付けられている項目

  1. 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
  2. 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
  3. 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
  5. 下請事業者の給付を受領する場所
  6. 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
  7. 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
  8. 下請代金の支払期日
  9. 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
  10. 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
  11. 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
  12. 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法

※こららの詳細については公正取引委員会のWebページをご覧ください。
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/oyagimu.html

支払期日を定める義務

発注する側は、納品物を検収する・しないに関わらず、発注した納品物を受領してから60以内のできるだけ短い期間で代金の支払期日を決めるよう義務付けられています。また、発注する側、受託する側の双方で支払い期日を定めなかった場合は、実際に納品物を受け取った日が支払い期日となります。

遅延利息の支払義務

発注する側が納品物の代金を支払期日までに支払わなかった場合、納品物を受領してから60日を経過した日から支払いを行うまでの間、その日数に応じて延滞利息(年利14.6%)を支払う義務があります。

書類の作成・保存義務

発注する側は、取引が完了したあと取引に関する書類を作成して2年間保存する義務があります。この点はフリーランスエンジニアとして仕事を請ける際には、あまり気にすることはないでしょう。これらの書類に記載される項目は以下の通りです。

  1. 下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
  2. 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
  3. 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
  4. 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
  5. 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者から役務が提供された日・期間)
  6. 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,検査を完了した日,検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
  7. 下請事業者の給付の内容について,変更又はやり直しをさせた場合は,内容及び理由
  8. 下請代金の額(算定方法による記載も可)
  9. 下請代金の支払期日
  10. 下請代金の額に変更があった場合は,増減額及び理由
  11. 支払った下請代金の額,支払った日及び支払手段
  12. 下請代金の支払につき手形を交付した場合は,手形の金額,手形を交付した日及び手形の満期
  13. 一括決済方式で支払うこととした場合は,金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
  14. 電子記録債権で支払うこととした場合は,電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
  15. 原材料等を有償支給した場合は,品名,数量,対価,引渡しの日,決済をした日及び決済方法
  16. 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は,その後の下請代金の残額
  17. 遅延利息を支払った場合は,遅延利息の額及び遅延利息を支払った日

※こららの詳細については公正取引委員会のWebページをご覧ください。 https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/oyagimu.html

下請法で問題となるおそれのある事例

下請法で問題となるおそれのある事例

約束の期日までに報酬が支払われない

 「別の仕事が忙しい」や「検収が終わらない」などの理由で、支払い期日までに報酬を支払わない場合は『報酬の支払い遅延』に該当するおそれがあります。

報酬の支払い方法が一括払いから分割に勝手に変更された

 数ヶ月に渡るプロジェクトの対価として高額な報酬を納品・検収後の翌月に一括払いで支払う契約になっていましたが、発注事業者の一方的な都合で数年にわたる分割払に変更された場合は、前項同様に『報酬の支払い遅延』に該当するおそれがあります。

発注事業者が契約締結後に減額を要求してきた

 すでに納品を行い、検収を受けていた仕事に対して発注事業者が「お客さんの都合でキャンセルになったから」「(フリーランスエンジニアに連絡することなく)発注した作業の一部を社内でもやったから」などの理由で報酬の減らすように要求してきた場合、『報酬の減額』に該当するおそれがあります。

発注事業者が依頼してきた価格が低すぎる

 発注事業者の予算単価のみを基準として一般的な価格よりも低い価格でフリーランスエンジニアに作業をさせたり、通常よりも短い期間での納品を求めたにも関わらず、その分の費用を考慮せずに通常の報酬で作業をさせた場合『著しく低い報酬の一方的な決定』に該当するおそれがあります。

やり直しを要求された

 発注事業者と発注時に取り決めた内容に沿って納品物を作成したにも関わらず「想定したものと仕様が異なるので作り直してほしい」などとやり直しを要求してきた場合、『やり直しの要求』に概要するおそれがあります。

一方的に著作権などを取り上げられた

 フリーランス側が著作権(たとえばイラストやキャラクター)などの委譲を拒んでいるにも関わらず、発注事業者が権利を委譲しなければ今後の取引を行うことが難しいことを示唆した場合、『役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い』に該当するおそれがあります。

自分に責任がないのに受領を拒否された

 発注事業者から提出された仕様に沿って納品物を作成したにも関わらず、発注事業者側の一方的な都合で検収基準が厳しくされたり、約束の納期を早めて納期に間に合わなくなったことを理由に納品物の検収や受領を拒否すると『役務の成果物受領拒否』に該当するおそれがあります。

契約範囲外のサービス提供を求められた

 納品したシステムに対して、契約外の保守管理を無料で求められたり、発注時の仕様に存在しない追加開発を無料で依頼された場合、『不当な経済上の利益の提供要請』に概要するおそれがあります。

教育コストを理由に不利な条件を提示された

 経験が浅い時代に発注事業者の教育やサポートを受けた仕事について、教育やサポートで投下したコストの回収が不十分であることを理由に長期間に渡って他社との取引を禁止されたり、安い価格で仕事をするように言われた場合『合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定』に該当するおそれがあります。

まとめ

今回は下請法について解説してきました。普段、フリーランスエンジニアとして活動している中で、クライアントから要求されたことの中にも下請法に抵触することがあるかもしれません。「大切なクライアントだから…」と思ってサービスをしていると、どんどんクライアントからの要求が過大になって、あなた自身を苦しめることに繋がるかもしれません。そんな時はぜひ下請法の存在を思い出し、武器として活用してみてください。

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