フリーランスエンジニアとしての独立を検討している正社員エンジニアとして働いている方とお話していると「給料が安い」「自由な働き方がしたい」「上司や同僚との付き合いに疲れる」という理由を良く耳にします。今回は、フリーランスエンジニアになることでこれらの課題は解決できるのか、正社員エンジニアとして活動するメリットのなにかなどについて解説していきたいと思います。
もくじ
フリーランスエンジニアと正社員エンジニアの違い

フリーランスエンジニアと正社員エンジニアの最大の違いは、働く会社と雇用契約を結んでいるかどうかになります。雇用契約とは、文字通り労働者と雇用者の間で締結される契約のことであり、両者が契約の内容について同意したことを証明するものです。
正社員エンジニアの場合:企業と雇用契約を結んで働く
正社員エンジニアの場合は、雇用元の企業と雇用契約を結んで働くことになります。労働基準法では「入社時に労働条件について書面で明らかにしなければならない」とありますが、必ずしも雇用契約書にサインする必要があるわけではなく、「労働条件通知書」という書類で代替可能で、一般的な雇用契約書(労働条件通知書)に記載されている内容は以下の10点です。また、正社員として登用された場合、その方は労働基準法による保護を受けることになり、会社の業績が思わしくない、会社の秩序を著しく乱した、遅刻や無断欠勤が多く勤務態度が不良であるなどの正当な理由がない限り雇用者側の都合で解雇することはできません。
- 契約期間
- 就業場所
- 従事すべき業務の内容
- 始業および終業の時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休憩時間・休日・休暇に関する事項
- 賃金の決定、計算および支払い方法
- 賃金の締め切りおよび支払いの時期
- 昇給の関する事項
- 退職に関する事項
フリーランスエンジニアの場合:必ずしも企業と雇用契約を結ぶわけではない
フリーランスエンジニアの場合は、企業と「準委任契約」や「請負契約」を締結して仕事をするケースが多くなっています。「準委任契約」は契約先の企業に対して提供した労働力に対して、「請負契約」は契約先の企業に対して成果物を納品したことにより報酬が支払われます。ここで注意しておきたいのが、フリーランスエンジニアと契約先の間に雇用契約は存在せず、基本的に労働基準法の適用は受けることができないという点です。正社員は、前述の通り十分な理由がなければ解雇することはできませんが、フリーランスエンジニアの場合はこれらの理由を満たしていなくとも契約期間がするタイミングであれば、企業側の都合で契約を解除することが可能です。
フリーランスエンジニアになるメリット

正社員エンジニアに比べて高額な報酬に期待できる
年齢 | 最高年収 | 最低年収 | 平均年収 | 正社員平均年収 |
25〜29歳 | 900 万円 | 420 万円 | 696 万円 | 378 万円 |
30〜34歳 | 960 万円 | 420 万円 | 780 万円 | 475 万円 |
35〜39歳 | 1,080 万円 | 480 万円 | 816 万円 | 582 万円 |
40〜44歳 | 1,140 万円 | 660 万円 | 840 万円 | 635 万円 |
45〜49歳 | 1,080 万円 | 600 万円 | 876 万円 | 670 万円 |
50〜54歳 | 1,200 万円 | 540 万円 | 660 万円 | 690 万円 |
55〜59歳 | 1,200 万円 | 540 万円 | 600 万円 | 684 万円 |
出典:SE HACK
フリーランス協会が発行している「フリーランス白書2020」によると、フリーランスエンジニアとして働く方の内約44%が800万円以上の年収を手にしています。また2018年と少し古めのデータですが、SE HACKの調査によるとフリーランスエンジニアの年収を年代別に見てみると総じて高めであることがわかります。
仕事を自分で選ぶことができる
正社員エンジニアの場合、会社からアサインされるプロジェクトを自由に選ぶことができません。自分にとって苦手な分野や興味のない仕事に渋々取り組んだ経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。フリーランスエンジニアの場合は、どの仕事を請けるかは自分で決めることができるため、自分の得意な仕事を中心に請けることでクライアント企業の満足度を高めることができるのと同時に、受け取る報酬額をアップさせることも可能です。
メリハリの効いた働き方ができる
最近は残業規制などで、仕事ができる時間に制限が設けられることも多くなってきました。そのため正社員エンジニアとして仕事をしていると、難易度の高い業務に長時間集中して取り組みたいときでも、会社のルールが優先されて決まった時間になると強制的に仕事を中断されてしまい続きは翌日に…なんてことも少なくありません。頑張る時はしっかり人以上にしっかり頑張って、休む時はしっかり休むというメリハリの効いた働き方ができるのもフリーランスエンジニアになるメリットといえるでしょう。
フリーランスエンジニアになるデメリット

スキルや実績がない状態で独立すると仕事が取れない
経験1~2年でフリーランスエンジニアとして独立した場合、スキル不足が原因で仕事が思うように獲得できないことがあります。またある程度の経験やスキルがあったとしても独立して間もない場合は、新規のクライアントを獲得するのに想像以上に労力が必要となるものです。最初のうちは実績を付けるために安い値段で仕事を請けることも大切ですが、フリーランスエンジニアとして成功するためには単価が安いままで仕事を続けることがないように注意する必要があります。
営業活動や経理処理などの雑務が多く、本業に集中できないことがある
フリーランスエンジニアは、営業活動から仕事の受注、納品・請求処理まですべて1人で対応する必要があります。そのため仕事の状況次第では、本業であるエンジニアリングに集中できる時間が少なくなることがあります。特に面倒なのが毎年年度末に対応する確定申告で、何度やっても慣れないというフリーランスエンジニアの方もいるくらいです。税理士に依頼したりクラウド型の会計ソフトを導入することで手間を軽減することも可能なので、苦手なことは、増えた収入の一部を使って他人に任せることで、自分の負担をへらす方法を模索すると良いでしょう。
各種社会保険が全額自己負担となる
正社員エンジニアならば健康保険や厚生年金の費用は会社が半分負担してくれていましたが、フリーランスエンジニアとして独立すると各種社会保険料を全額負担しなくてはなりません。また加入できる年金制度も自動的に国民年金に切り替わるため、自分で各種制度を活用して受領できる年金額を増やすための対策をしておかないと、正社員時代に加入していた厚生年金に比べて将来受け取れる年金額が少なくなってしまいます。
→関連記事:
フリーランスエンジニアにこそ知って欲しい年金の繰り下げ受給制度と付加年金
正社員エンジニアとして働くメリット

社会的信用が高く、安定した収入が期待できる
正社員エンジニアとして働く最大のメリットはなんといっても安定した収入があることでしょう。フリーランスエンジニアは仕事が全くなかった期間は無収入となってしまいますが、正社員エンジニアならば仕事が少なく暇な期間があったとしても、毎月決まった日に給料が振り込まれます。また一定以上の勤続年数を経過すれば、住宅ローンを組んで家を買うなどの大きな買い物をすることも比較的容易なことも正社員エンジニアとして働くメリットの一つです。
教育制度が充実している
全くの未経験で入社しても、会社側で提供する研修プログラムを通じて一人前のエンジニアとして独り立ちできるように教育制度が充実しているのも正社員エンジニアとして働くメリットといえるでしょう。また現場に出た後でも上司や先輩たちが、経験の浅い正社員エンジニアの方が段階を経て成長できるよう立案した教育プログラムに応じてアサインされるプロジェクト内での役割を決定してくれるなど、フリーランスエンジニアに比べて手厚い教育体制があります。
税金や社会保険関連の面倒な手続きはすべて会社がやってくれる
フリーランスエンジニアの場合、住民税や所得税や各種社会保険の支払いはすべて自分で行わなくてはいけません。一方、正社員エンジニアはこれらの支払いは会社側が給料から天引きして納付してくれるので、ふるさと納税を利用したなどの特別な場合を除いて自分から税金や社会保険料について対応する必要は一切ありません。
正社員エンジニアとして働くデメリット

手にできる給料の額面に限界がある
正社員エンジニアの場合どれだけ一生懸命働いたとしても、手にできる給料に限界があります。仕事で良い結果を残しても、次回の査定で給料がいきなり倍になるようなケースは稀で、時間をかけて徐々に給料をあげていくのが一般的な正社員の給与体系なため、フリーランスエンジニアに比べると仕事の頑張りに応じた給料は短期間では得られにくいといえます。
会社の独自ルールに縛られて視野が狭くなる
企業には、ほぼ例外なくその会社独自の仕事の進め方に関するルールが存在します。長期間一つの会社に在籍していると知らない内にそのルールに慣れてしまい、どうしても視野が狭くなりがりです。一方、フリーランスエンジニアとして様々な会社の現場を経験することで自然と視野が広がり、自分が参画している現場に最適な効率の良い開発手法や問題解決の方法について提案することが可能になり、エンジニアとしての市場価値アップにつなげている方も多数います。
人間関係に悩まされることがある
どんな人でも苦手な人や、相性の良くない人はいるものです。正社員エンジニアの場合、そういった方々と同じチームになった場合、短くても半年、長ければ数年に渡って一緒に働かなくてはなりません。その間うまくコミュニケーションを取れないことが原因で、正当な評価を受けられず、全く昇給しなくなる…なんてことも少なくありません。フリーランスエンジニアの場合、自分と合わないクライアントからの仕事は、契約期間終了後に更新をしないという選択をするだけで、合わない人と一緒に仕事をすることから解放されます。
フリーランスエンジニアに向いている人

自分の成長とお金に貪欲な人
「スキルを身につけることでより高額の年収を実現したい。そのためにいま何をすべきか」といつも考えているような人はフリーランスエンジニアに向いているといえるでしょう。自らのスキルアップは当然として、高額な報酬を期待できる案件を獲得するために複数のフリーランスエージェントへの登録、知人や会社員時代の知り合いのツテを使った営業活動をはじめ、フリーランスエンジニア同士へのコミュニティに積極的に参加することで案件獲得のチャンスを最大限に広げられれば、おのずと案件を集まってくるはずです。
自己管理能力が高く、責任感の強い人
フリーランスエンジニアには、正社員エンジニアと違って仕事の進捗を管理してくれる上司や先輩がいません。自分自身でスケジュールを管理して、約束した日までにクライアントの期待する成果物を納品できなければ、自然と自分に対して発注してくれるクライアントの数が減ってしまいます。フリーランスエージェントを利用して企業の開発プロジェクトに参加する場合はクライアント企業の担当者が進捗管理をしてくれますが、責任感に欠けてプロジェクトの中でプロパー社員以上に手がかかるようであれば、長期の契約に繋げることは難しいでしょう。
正社員エンジニアに向いている人

チームで結果を残すことが得意な人
アサインされるプロジェクトにもよりますが、正社員エンジニアはチームで仕事するケースがほとんどです。自分に与えられた仕事だけをこなすだけではなく、同僚が担当している仕事の進捗にも常に気を配り、遅れが出ている時は自ら進んで手助けをするなどチームとして結果を出すことに喜びを感じることができる方は、正社員エンジニアとしてチームリーダーやマネージャーとして活躍できる可能性が高いと思われます。
安定した収入を望む人
家族がいる、住宅のローンがあるなどの理由で、毎月安定した収入を望む人は正社員エンジニアとして働くことをおすすめします。フリーランスエンジニアと比べて若いうちから高額な給料を望むことはできませんが、スキルを磨いて経験を積むことで徐々に給料をアップさせていけることは正社員エンジニアならではの魅力です。また厚生年金に代表される手厚い福利厚生はライフステージが変化する際に必ず強い味方になってくれることでしょう。
フリーランスエンジニアの定年は?

正社員エンジニアと違って、フリーランスエンジニアには明確な定年がありません。そのため60代後半でも現役として最前線で働いている方もいます。一方で、40代後半あたりから徐々に仕事が受注できなくなり、フリーランスエンジニアとしての活動を辞めて会社員として再就職を目指す人も一定数存在します。一体、年齢を重ねてもフリーランスエンジニアとして活躍できるのはどのような人なのでしょうか?
答えは非常に簡単です。年齢を重ねても案件を受注できている方は、年齢によってクライアント企業が求めるスキルを着実に身に着けている方ばかりです。具体例をあげるとすれば20代~30代の間は若さと体力をフルに活かしてプロジェクトの最前線でコードを書ける能力が重視されますが、40代以降は体力的に厳しくなってくる一方でこれまでの経験を活かしてマネジメントやクライアントとの調整、コンサルタントして活躍するなどが求められるというわけです。
まとめ
今回は、フリーランスエンジニアの実態と題し、正社員エンジニアとの比較をしながらメリットやデメリットについて見てきました。それぞれの働き方でメリットやデメリットがありますので、あなたが今後こうありたいと思えるほうを選ぶことをおすすめします。